役員運転手は、企業や団体の社長や役員の送迎を行う運転手のことです。役員運転手は、専属運転手やお抱え運転手などとも呼ばれています。
企業や団体で役員運転手を利用する場合、ドライバーの労働時間や待機時間、36協定や労働基準法などが気になる方はいるのではないでしょうか。
そこで今回は、役員運転を自社で雇うにあたって気になる労働関係の疑問を解消します。
役員運転手の労働時間の考え方
役員運転手を雇えば、社長や役員の運転負担を減少させることができます。これから役員運転手を自社で雇いたい場合は、労働時間について理解する必要があります。
まず役員運転手の労働時間を考える時に、どこからどこまでが労働時間としてみるかが議論になります。
役員運転手は、役員の送迎や外出の際に運転しますが、それ以外の運転していない時間も相当あります。いわゆる待機時間です。一見すると休憩時間と同じように見えますが、運転手は次の仕事の準備として道順や混雑状況の確認、洗車や清掃をしています。
また、それらの事をしていなくても、外出に備えていつでも出発できるように準備をしています。したがって待機時間も勤務時間と考える必要があります。
とはいえ待機時間のうち1時間程度は昼食の時間に充てることは十分可能ですから、休憩時間については労働時間から控除してかまいません。
2時間以上の休憩時間を取得させることが可能な(完全に職場離脱ができる)場合は、拘束時間が長くなるため、基本給をそれに見合う水準に設定することが必要です。結論から言えば、拘束時間から1時間の休憩を除いて労働時間と考えることが合理的であると思います。
ただし、複数の役員が交替で役員車を使う場合や、社長が立て続けに移動する際には、休憩の1時間を確保しづらいこともありますので、運転手の管理者は休憩時間をあらかじめスケジュールに組み込んでおくような配慮が必要です。
ちなみに、朝晩の送迎のため運転手の自宅近くの車庫を利用している場合、車庫から役員の自宅までの走行などの回送も、役員運転手の業務として考えます。
営業車両などで通勤を許されている場合の移動時間は、通勤として労働時間に加えることはしませんが、役員運転手は車両の管理走行が業務ですから勤務時間と考える必要があります。
役員運転手を時間給や個人事業として利用する
役員の朝晩の送迎が伴う場合、気になるのが長時間労働とそれに伴う残業代支払です。先ほど説明したように、待機時間が多く仕事の負荷が大きく見えないことから、勤務時間を短くしたいと考えがちです。その際に役員運転手を時間給のアルバイト契約や個人事業者として契約している企業もあります。
しかし、労働時間以外があいまいで、いつでも呼び出されるような状況におかれているアルバイト契約の場合は、実質的に待機時間も拘束されているものとして、賃金支払いの対象とみなされる場合もあり、あとあと賃金未払いで揉めることもあるかもしれません。
また個人事業者として請負契約とした場合にも実質的に労働者と変わらないとみなされる危険性が高く、その際には偽装請負として直接雇用の義務が発生します。したがって安易な人件費削減策は回避するのが望ましいでしょう。
役員運転手にも36協定は適用される?
役員運転手も、一般の従業員と同様に36協定の対象になります。他の労働者に較べて労働時間や休日労働の頻度が多いようであれば、職種を分けて36協定を結んだほうが良いでしょう。
役員専属の自動車運転手は労働基準法第41条(労働時間規制)の適用除外の断続的労働従事者とすることも可能ですが、労働基準監督署の許可が必要なこと、拘束時間についての制限があることから、安易な利用は避けたほうが良いでしょう。
待機時間の過ごし方は?
役員運転手の待機時間は原則勤務時間とみなされます。したがって役員運転手は運行の予定がないからと言って自由に過ごせるわけではありません。待機時間中でも車のメンテナンスや清掃をするなどの業務を行います。
社長や役員から声がかかったとき、いつでも運転できるだけの体制を整えておく必要があります。また運転業務に支障がなければ、運転業務以外の補助作業も手伝うことがあるでしょう。
逆に深夜や早朝の勤務が多い場合は、待機時間中にゆっくり体を休めておくのも役員運転手としては必要になります。
ゴルフの送迎の場合、ラウンド終了まで相当の待機時間がありますが、その時間を利用してマスター室にラウンドの進行状況や終了時間を確認したり、役員の帰宅時間に合わせて交通状況を確認したりします。
長時間の待機時間があっても、役員運転手は緊急時に備えてゴルフ場から離れないのが原則です。
昼食は運転手控室でレストランの食事を注文するか、役員をお迎え行く前に昼食を用意する必要があります。待機時間が長いからと言って、役員車でゴルフ場から離れて勝手に食事をとりに行くことは望ましくありません。
しかし、このような事情に理解をしていただいて、ゴルフ場での昼食に関して何らかの配慮を頂ければ、運転手のモチベーションは上がるでしょう。
まとめ
役員運転手を雇う場合、労働時間に対して理解を深めておく必要があります。役員運転手は待機も仕事のうちなので他の業務とは比較しづらいところがあります。
ですから他の社員と机を並べて待機させるのは少し無理があると思ってください。できれば運転手が過ごしやすいように専用の控室があると理想的です。